部屋

これで最後。2年間住み慣れた部屋ともお別れ。中を確認してもらって鍵を返却した。特に修理が必要な箇所もなく、契約上定められたクリーニング代だけで済むらしい。綺麗な状態で返すことができてよかった。減価償却の話(非常に勉強になった)を管理人さんから聞いた後に「良い部屋でした」と素直な感想とお礼を伝えた。伝えたというか、勝手に口から出てきた感じだったんだけれど。

少し変わった間取りをしていたから、最初は家具の配置にかなり悩んだんだよな。ただ、元からたくさん棚が備え付けられていて、物を失くしやすい自分はその作りに非常に助けられた。そこまでの遮蔽性はないものの、軽く仕切れるように配置された3枚の扉は、意識を仕事に向けて切り替えるのに役立つ。そして何より、ベランダのガラス扉から見える夕焼けが好きだった。空の色の移り変わりは時間の経過を教えてくれるから、時間感覚を失いがちな自分にとってはいつの間にか安心感を覚えるものになっていて。

初めて一人きりで過ごした夜のことも、コロナで仕事も外出もできない中ひたすら勉強していたことも、大事なことからしょうもないことまで人と夜通し話し込んだことも、夜風にあたりながら真剣に考え事をしたことも、そういった様々な思い出があの部屋と共にある。昨日掃除をしたあと出ていくときに最後に見たのが西陽が射し込んだ姿で。その時間帯にだけ味わえる眩しいくらいの明るさが一番のお気に入りだったんだよな。一人暮らしのイメージとあの部屋の光景はたぶん切っても切れない。共に過ごした時間の分だけ特別になっていくんだろうな。何でも。