2022.10.30

また忘れていた。順番が前後してしまったけれど、まあいいか。それにしても、ちょっとぼんやりしすぎかもしれない。

 

待ちに待った日。ずっと楽しみにしていた。というのも、神保町で古本まつりがあるから。何だか、本に囲まれているだけで落ち着くというか。それに、古本を買いに来る時点である程度本が好きな人が多そう。世の中には自分が場違いだなと思う場が存在するのだけれど、そんな感覚がまったくない。馴染む。本と向き合うときは一人だから、それがいいのかもしれない。

朝から浮かれて軽くお化粧をして、イヤリングもつけて、秋めいた装いがしたくてコートは着ずにストールを羽織るだけにした。ワンピースのリボンはなんとなく正面ではなく斜めで結ぶ。いつの間にか、その日の気分で服装を選ぶことができるようになっていたことに気がついて嬉しくなった。淡い好き嫌いもあるらしい。

道中電車に乗りながら迷っていた。彼が近く…でもないけれど来ているらしい。会いに行くべきなのか。当初伝えられたとき、それなら少しくらい会えるのかと訊いたら無理だと言われて。会えるから伝えてきたのだと思っていた。そもそも、交際相手に会うことがついでって何なのかなと思ったり。いや、なんとなく他意はないんだろうなと思っている。それだけのためにというのは心理的にハードルが高いとか金銭的に厳しいとか、私の想像の範疇でも色々と思い浮かぶし。ここ最近の彼の言動から、会うこと自体に消極的なわけじゃないのだろうとは思っている。彼と付き合い始めてこのかた気持ちすら見えないのが一番堪えるなとか、なんで私ばかり会いに行っているんだろうとか、幾度となく考えたけれど。一方で、私はある種金銭的に困ったことがないので、そのあたりの感覚がまずもって人とずれている可能性が高いとも思っていて。彼が「お金が無い」と言うとき、それが何を指しているのか本当のところわかっていない。それに、私の場合は帰省が絡む限り、交際相手に会うためだけの移動にはならない。だから相手に無理強いはしたくないし、同時にそれは言っては駄目な気がしていた。ところで、言ったら駄目な気が強烈にしていたものの、会いに来てくれたら嬉しいということは別に伝えてもいいのでは?と思い、最近はたまに混ぜている(つもり)。何も言ってはいけないならポジティブな気持ちも伝わらないのかもしれないと、少し思い直した。

それにしても行きたいところが増えていく一方だな。旅行感覚で観光に誘ってみればいいのかしら。私がしたいのは散歩とかなんだけれど。自分が日常的に触れている中で好きな場所に一緒に行きたいというか。どこか出かけるなら非日常のお出かけ気分になるから、やっぱりちょっと違うかも。いや、それもそれでいいかもしれない。何でも貴重な機会だし嬉しいな。なんとなく、去年の8月に彼に断られた後にお気に入りの橋を渡っていたときのことを思い出した。特定の誰かと一緒にいたいと強く願ったことが初めてで、それが叶わないというのもよくわからなくて、自分でも急激な変化に全く理解が追いつかなかった。今も追いついているかというと正直怪しい。本当、人生何が起こるかわからないものだな。

他のものと天秤にかけてどうでもいいと思われているならうーんとなるけれど。私も彼も明日死ぬかもしれないし。むむむとなりつつ、会えて嬉しいくらいは(その場で素直に受け取れるかはわからないけれど)言ってもらえると嬉しいし、私もまた誘いやすいのにな〜とか。1年もの間連綿と移り変わってきた気持ちがあぶくのように浮かび上がっては消え。最近気がついたけれど、悪い方向に考えるのはいくらでもできるな。会っても楽しくないのかなとか、大切な人と会えるって嬉しいものじゃないのかなとか、何とも思っていないのかなとか。無意識にそう感じているときが多くて中々感覚のずれに気がつくのは難しいけれど、なぜそう感じたのか伝えられたらもう少し違ってくるのかもしれない。この間会えなかったときは、私なりにそう感じた理由を伝えられて一歩前進した気がした。お互いに何かを感じたときには根拠があるんだろうな。私も何か思ったら伝えてほしいし。

神保町に着いてからは驚きの連続。通りに本棚ワゴンがずらっと並んでいて、人が群がっている。この場所に所狭しと人がいるところは初めて見た。3年ぶりの開催ということで、人が多かったのかもしれない。お店ごとに取り扱っているジャンルが異なるから、変わったものもあって面白い。調子に乗って文庫本を8冊ほど購入して、ついでに持ってきたカメラで何枚か写真を撮った。古本まつりと聞いて来る人たちと言えど、おそらく読む本のジャンルやほしいもの、読み方のスタイルは皆違っていて、そういった人たちがこれだけ集まる機会も中々ないように思う。来てみてよかったな。また来年も行きたい。

古本を一通り見終わったあと、悩んだ結果、やっぱり会いに行くことにした。会いに行かなかったら後悔しそうだなと思ったから。あと、誕生日を直接お祝いしたかった。経路を検索しながら向かって、会場に着いて、広さや配置を適当に見て回って。以前行った同人ゲームの即売会とは規模が違うけれど、場違いだなと感じたのは同じだった。本は見たら気になるものとそうでないものが選べる。でも、そこにあったものはどれも区別がつかなかった。たぶん良い意味で。どれも気合いが入っているというか。突出した興味のない私がいてもいい場所ではない気がする。まあ仕事柄良い経験ではあった。

彼を見つけて向かったら目を逸らされた。やはり怖いのだろうか。私の顔を覚えていないとしたら、この人は私の何を見て何を好きになったのだろうと不思議に思う。でも、私も人の顔はあまり覚えていないな。好きな人の顔くらい努めて覚えていたいけれど、目が合わないからあまりわからない。思い出せるのは横顔と俯瞰ばかりだな。今はマスクもあるし。とりあえず会って話してお祝いできたから目的は達せられ、行きしなにあれだけうんうん悩んでいたのが嘘のようにすっきりして帰宅。どうやら自分は会って彼の顔が見たかったらしい。色々あったし、元気そうで安心したというか。たぶん忙しかったのだろうけれど、ここ最近連絡もなく、関係が希薄でちょっと心もとなく感じていたのも事実で。改めてCDがほしいとも伝えられたし、会いに行ってよかったな。重要なのは会いに行くべきかどうかじゃなくて、私が会いたいかどうかだったのかも。意識的に自分の気持ちを何かと天秤にかけると他のものを優先する傾向があるから、あまりそういった発想がなかった。そこに気持ち100%の恋愛感情をぽんと放り込んだらまあバグるよな。自分の気持ちに素直になることもかなり大事かも。

なんか、ことあるごとに私ばかり好きみたいだな〜とか思うけれど、実際のところどうなんだろう。悪い方向に考えることはいくらでもできると感じ始めたけれど、信頼するという感覚はよくわからなくて。人と深く関係を築きたいなら知らないといけないのだろうけれど。怖いかも。会っているときもそうでないときも、私と向き合っているときの彼を見て、私と向き合っていないときの彼を知ることがその一歩なのかもしれない。そのくらいならできるかな。

遠路はるばるお越しくださりありがとうございました。そう言ってもらえるとは思っていなくて意外だった。ちょっとくらい私の気持ちも考えてくれているのかな。いつか同じ言葉を言ってみたくて、ほんの少しだけ気持ちを混ぜて言い返した。