往時

去年の夏はつらいことが多く、時々弱音を吐きつつもめげずに何とか乗り切ったような形だった。そのときの状況を表してほしいと依頼されて、期限を切ってPCに向かって書き進めると、当時の感情が沸々と浮かび上がってきて陰鬱な心持ちになる。苦痛という灰汁を掬い上げて作った煮凝り。言葉で固めたもの。そんなものでも、段々と形になっていく。今の自分は、自身が感じたことを言葉を用いて形にできる。そのことに、ほんの少しだけ救われるような心地がする。

認めたものを提出して、依頼者に読んでもらう。「当初は手を入れる想定だったけれど、敢えてこれをこのまま渡そうと思う」と言われたときに、あの頃の労苦が少しでもより良い未来に繋がるならと、一握りの希望が見えそうになって、その気持ちを必死に押し止めた。これはあくまで祈りであって、願いでしかない。現実になることを望んではいるものの、過剰な期待はしたくない。何度も伝えるべきと思ったことは伝えた。それでも何も変わらなかった。変わらなかったから、私は書くことになった。時機はもうとっくに過ぎていた。