本棚 その1

今年に入ってから読んだ作品について。一先ずぱっと感想とか諸々思い出せるものだけ。どうしても重く暗い作品が多くなるので(これはたぶん趣味)、どうにかして明るい作品を読みたい。誰か知っている人いないかな。でもその前に積んでいる本を先に読まないと。



『歯車』(芥川龍之介
高校時代に勧められてから定期的に読むが、年々内容が鮮明に想像できるようになってきて、毎度気分が落ち込む。今回もそう。見えないはずの歯車。一時的に何かに逃避しても終わるとまた見えてくる、際限のない不安の象徴。著者が晩年(確か自殺した年)に書いた作品で、内容がかなり暗く、そこそこの知識がないと理解できない(多くの文学作品名や登場人物名が引用されている)ため、人におすすめはしない。でも、作品としてはかなり好きな方。この人の感性はとても繊細だと思う。余談だが、この作品を読むといつも『罪と罰』を読みたくなる(名前が出てくるので)。


『秋風記』(太宰治
エピグラフで開始。太宰らしい。主人公のモデルはおそらく太宰本人。立ち直ろうとする話。しかれども、贈った指輪に込められた意味を相手には理解されず(もしくは相手も理解したうえで)、やんわりと拒絶されたところで物語は終わる。生に向かった途端にこれだから、また死に向かうんだろうな。これも太宰らしい。芥川と太宰の描く絶望はそれぞれベクトルの向きが違っていて面白い。短い作品だけれど、太宰というだけでうーんってなる人いそうだから(そう思われるのも嫌だから)、おすすめはしない。正直それも半分は正しいと思うし。私は太宰かなり好きだけれど。そこそこの作品読んで、面倒で不器用で、一生懸命な人だなと思う。読んだ印象だけなんだけれど。
印象的な箇所。「僕には、花一輪をさえ、ほどよく愛することができません。ほのかな匂いを愛ずるだけでは、とても、がまんができません。突風の如く手折って、掌にのせて、花びらむしって、それから、もみくちゃにして、たまらなくなって泣いて、唇のあいだに押し込んで、ぐしゃぐしゃに噛んで、吐き出して、下駄でもって踏みにじって、それから、自分で自分をもて余します。自分を殺したく思います。」


『線は、僕を描く』(砥上裕將)
水墨画が題材の作品。交通事故で両親を失った心の傷から立ち直れずに日々を過ごしていた主人公が水墨画に出会い、描くことを通して生きる意味を模索する話。フィクションらしさはかなりあったものの、面白かった。あとは、基本主人公の心情にずっと焦点が当たっているから読みやすかったかも。芸術方面はからきしなのでそのあたりはわからないが。読み返す作品ではないかも。絵画を扱った作品はよくあるのに、水墨画だと珍しいように感じ、興味が出たので手に取った作品。


星の王子さま』(サン=テグジュペリ
テグジュペリは人生の羅針盤(かなり個人的な意見)。なのに、悲しいことに今読んでもわからなかった。いや、わかる部分もあったけれど、やっぱりわからない部分がある。でもそんなに間違っている気もしなくて、昔みたいにわからないだけで切り捨てることもできなくて、感情がぐちゃぐちゃになった。テグジュペリ曰く、「絆を結ぶ」には、「がまん強くなることだ」とのこと。なんか私の努力の方向性は違うのかな。
印象的な箇所。「ぼくは横目でちらっときみを見るだけだし、きみもなにも言わない。ことばは誤解のもとだから。でも、日ごとにきみは、少しずつ近くにすわるようにして……」「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ」「きみは、なつかせたもの、絆を結んだものには、永遠に責任を持つんだ。きみは、きみのバラに、責任がある……」